新商品を成功に導く!商品開発の 流れ と効果的なマーケティングリサーチ手法を徹底解説

商品開発マーケティングリサーチ

新商品を市場に投入し、成功へと導くためには、アイデアや開発力だけでなく、「的確なマーケティングリサーチ」が欠かせません。どれだけ魅力的な商品でも、ターゲットのニーズや市場環境を無視しては、消費者の支持を得ることは難しいでしょう。

商品開発には、市場分析から始まり、アイデア創出、コンセプトの開発、試作品の開発、そして市場投入後まで、いくつもの段階があります。それぞれのプロセスにおいて、目的に応じたマーケティングリサーチを適切に実施することで、開発リスクを減らし、より成功する商品へと近づけることができます。

今回は、商品開発の流れと、各ステップにおいて実施すべきマーケティングリサーチについて解説していきます。本記事では各ステップを順序立てて解説しますが、実際は必ずしも直線的に進むわけではなく、状況に応じて順序を変えたり同時に進めたり、前のステップに戻ったりしながら流動的に進めていきます。

商品開発に関わる方や、マーケティング部門でリサーチ を担当される方はぜひ参考にしてみてください。

商品開発のステップ①:市場機会の発見

商品開発の最初のステップとして、新商品を投入する市場の特定をおこないます。
具体的には、自社とシナジーがあり、かつ商品の成功が期待できそうな市場を探っていきます。

まずは、3C分析によって自社の経営資源と競合の状況、市場の動向や顧客の消費実態を整理します。さらに、市場を「デモグラフィックス(人口統計学特性)」や「サイコグラフィックス(心理学的特性)」などの切り口で細分化(セグメンテーション)し、その中で自社の新商品が狙う市場を検討します。 

市場機会の発見のためのマーケティングリサーチ

市場環境の全体像を把握するためには、市場規模や成長率などが記載された業界レポートや公的統計などでデスクリサーチをおこないます 。数値的な側面だけではなく、 顧客の購買心理や消費行動などの実態を把握するためには、インターネット調査などの「定量調査」をおこないます。

インターネット調査は、アンケートパネルの登録者に対して実施するため、市場全体を把握することはできませんが、大サンプルで調査を実施することで、ある程度の傾向を掴むことはできます。

インターネット調査の詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:インターネット調査で失敗しないためのポイントを解説!具体的な実施手順も紹介

商品開発のステップ②:アイデア創出 ・選定

新商品についてのアイデア出しをおこない、既存商品には無い価値や特徴といった独自性を探っていきます。

まずは、ブレインストーミング等でできるだけ多くのアイデアを 出し合います。その後、市場性や実現可能性などの観点からアイデアを絞り込んでいきます。

アイデア発想にあたっては、消費者の実態を深く理解し、潜在的に抱えている課題やニーズ等を探索することが重要です。これらの情報をもとにアイデア創出をおこなうことで、顧客の課題に沿ったアイデアを考えていくことができます。

アイデア創出のためのマーケティングリサーチ

アイデア創出のためには、前述の通り消費者の潜在的な課題・欲求・行動を深く理解するための調査が必要です。単に「何が欲しいか」を聞くだけでは不十分で、「なぜそれが必要なのか」「本当に困っていることは何か」を探り、潜在ニーズやインサイト(気づいていない本音)を抽出することが求められます。

したがって、広い実態を把握する「定量調査」よりも、少数の対象者を深掘りする「定性調査」が適しています。具体的な調査手法としては、「インタビュー調査」や「エスノグラフィー」などが挙げられます。

インタビュー調査とは

インタビュー調査とは、対象者から感想や意見などを直接発言してもらう対話形式の調査手法です。インタビュー調査には、調査専門スタッフと対象者が1対1で実施する「パーソナルインタビュー」と、4~10人程度の対象者を一堂に集めて実施する「グループインタビュー」の2種類があります。

インタビュー調査の詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:グループインタビューの手法やメリットとは?活用方法や成功ポイント

エスノグラフィー(行動観察調査)とは

エスノグラフィー(行動観察調査)とは、フィールドワークによって観察対象者の日常に入り込み、共に生活を体験することで詳細な実態やインサイトを探索する調査手法です。

エスノグラフィーの詳細はこちらをご覧ください。

参考:エスノグラフィーの手法・メリットや成功ポイントを解説

商品開発のステップ③:コンセプト開発・評価

商品アイデアの絞り込みが完了したら、そのアイデアをもとに どのような商品でどのようなベネフィットを消費者に提供するのか、といった商品コンセプトの開発をおこないます。

商品コンセプトとは、商品のベネフィットやターゲット、独自性などを端的に表した商品開発の指針となるものです。
作成したコンセプトが消費者にどの程度受容されるかを確認し、修正していきながら最終的な商品コンセプトを作り上げていきます。

コンセプト開発・評価のためのマーケティングリサーチ

商品コンセプトの開発段階では、 「コンセプトシート」などを用いて、消費者の評価を得る「コンセプト調査」を実施します。

コンセプトの受容性を量的に把握する場合は定量調査をおこないコンセプトの評価 理由や改善点などを確認します。さらに深層を追求する場合には定性調査をおこないます。(定性調査のみ実施することもありますので、内容に応じて調査方法も変わります) 。

商品開発のステップ④:試作品の 製作・評価

商品コンセプトが確定したら、パッケージや中身などの試作品を製作し、評価を確認しながら改良を重ねていきます。

試作品は、まずは自社の従業員などを対象として社内で評価を得る場合が多いかと思いますが、社内の人は一般消費者よりも商品に詳しいため評価にバイアスがかかってしまいます。そのため、ある程度開発が進んできたら、一般消費者から評価を得る「製品テスト」を実施することが重要です。

試作品の開発・評価のためのマーケティングリサーチ

製品テストは、対象者に実際の試作品を試食や実演してもらう調査です。主に専用の調査会場で実施する「会場調査」と、対象者の自宅に試作品を郵送して実施する「ホームユーステスト」の2つが該当します。

また、商品の改良が進み消費者の評価が一定の基準をクリアしたら、商品開発の最終段階として、コンセプトと実際の商品の一致度や市場性の確認をするための「CPテスト(コンセプト&パフォーマンステスト)」 と呼ばれる調査を実施します。

会場調査とは

会場調査とは、調査対象者(モニター)を会場に集めて、調査専門スタッフの管理のもと、調査対象の商品・サービスについてアンケートやインタビューを行う調査のことです。

会場調査の詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:会場調査(CLT)の手法やメリットとは?活用方法や成功ポイントも解説

ホームユーステストとは

ホームユーステストとは、商品・サービスを調査対象者の自宅に送付して実際に一定の期間利用してもらい、評価を集計する調査手法です。

ホームユーステストの詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:ホームユーステストとは?手法や種類・評価方法と実施手順

CPテスト(コンセプト&パフォーマンステスト)とは

CPテストとは、コンセプト調査と製品テストを組み合わせた調査で、コンセプト調査で購入意向を示した人に対してホームユーステスト等で商品を試してもらい、コンセプトとの一致度やリピート意向などを確認するという内容です。

この調査で得られたトライアル率とリピート率などのデータをもとに、大まかな生産体制と販売体制を計画していきます。

また、商品コンセプトで表しているベネフィット等が、実際の商品で十分実現できているかを改めて確認し、商品を最終段階に進めます。

商品開発のステップ⑤:マーケティング戦略の検討

商品の開発とともに、商品価格や販売チャネル、プロモーション施策など、その他のマーケティング戦略についても検討していきます。

商品価格は、商品の原価や顧客ニーズ、ポジショニング等を踏まえて戦略的にプライシングをおこないます。

販売チャネルは、実店舗だけではなくAmazonや楽天、自社ECサイトなど多岐にわたる中から、ターゲット顧客の買いやすさや利益率、ブランド戦略などを考慮して決定します。

また、プロモーション施策についても、CMやセールスプロモーションなど、ターゲットに対して購買意欲を喚起させ、トライアルを促す施策を検討していきます 。

参考:マーケティングミックスとは?4P・4Cの内容や事例を解説!

参考:価格受容性調査とは?PSM分析・CVM分析・コンジョイント分析を解説

広告・プロモーション評価のためのマーケティングリサーチ

CMなどの広告案については、商品と同様にリサーチによって評価を確認しながら制作を進めます。ターゲットに対して広告案を提示し、どの程度の購入意向が得られるのか、商品コンセプトが正しく伝わるか、等を確認し改良をおこないます。

調査手法としては、主に会場調査やグループインタビューで実施します。制作段階の広告案は機密性が高いため、オンラインではなく実際の会場で実施する方が適しています。

商品開発のステップ⑥:上市後の検証・改善案の検討

商品が販売された後は、販売数や商品評価 などの確認、CMやプロモーション施策などの効果検証などをおこない、次の打ち手を検討していきます。

商品のトライアル要因や購入者の属性などを分析することで、商品コンセプトやコアターゲットなどの仮説との差異を明らかにし、戦略の修正をおこないます。

その後は、再度ステップ①に戻り、新商品投入後の市場を分析し次の商品開発へ進む、といったように商品開発の①~⑥のステップを回していきます。

上市後の商品評価確認のためのマーケティングリサーチ

上市後に商品の評価を確認する調査 としては、商品の購入者を対象とした調査などが適しています。例えば、商品の満足度を定量的に確認する「顧客満足度(CS)調査」や、購入理由や使用実態をインタビュー調査で定性的に深掘りする、などといった内容が考えられます。

購入者の特定は、スクリーニング調査によっておこなうことが多いですが、新商品は購入者が少なく、対象者を探すことが難しい場合があります。そのような場合は「ID-POSリサーチ」 が適しています。

顧客満足度(CS)調査とは

CS調査とは、自社の商品やサービスがどの程度顧客に受け入れられているかを確認する調査です。CS調査によって商品の改善点を見つけて、今後の商品改良やマーケティングに活用していきます。

CS調査の詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:顧客満足度調査(CS調査)とは?

ID-POSリサーチとは

ID-POSリサーチとは、消費者の購買履歴であるPOSデータと、消費者情報であるIDが紐づいた「ID-POSデータ」と、アンケートなどの「リサーチ」を組み合わせた市場調査(マーケティングリサーチ)の手法です。

ID-POSリサーチの詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:ID-POSリサーチとは?メリットや活用例などを解説

まとめ

商品開発を成功に導くには、各ステップに応じたマーケティングリサーチの実施が欠かせません。市場分析から、アイデア創出、コンセプト検証、製品テスト、そして上市後の検証まで、各ステップの中で適切な調査をおこなうことで、意思決定に役立つデータを得ることができます。

弊社(株式会社マーケティング・リサーチ・サービス)では、商品開発に関するリサーチを数多く実施しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

(digmar編集部)