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2020年3月30日

自主調査 銭湯の利用に関する実態調査

「銭湯」が若者に人気!?若者銭湯利用者の特徴やニーズは何か

 

街の銭湯が少しずつ廃業していく中、若者を中心に銭湯のユーザーが広がっているらしい、というニュースを近年目にするようになりました。テレビやネットメディア等でも、ファッションブランドとコラボや、アート系のイベント開催などが取り上げられ、銭湯運営サイドも若者をターゲットとして意識しているように感じられます。
銭湯が若者の利用により本当に復活の兆しを見せているなら、それは、「昔のもの」となりユーザーが離れつつある産業の復活のヒントにも通ずるはずであると考え、我々は若年の銭湯ユーザーにアプローチすることにしました。
※銭湯の定義:利用料金(大人)が470円程度の温浴施設を、ここでは銭湯と定義しています。
利用料金が700円以上のいわゆる「スーパー銭湯」は今回の調査では除いています。

 

 

調査目的
・ 銭湯の利用に関する意識・実態を年齢層別にみることにより、「若いユーザー」のプロフィールを明らかにする。
・ 「若いユーザー」が求めているものの考察から、銭湯業界や他の廃れ行く産業の復活に必要な、普遍的な要素を抽出する。

 

 

調査仮説
・ 若い銭湯ユーザーは、年齢の高いユーザーと比べて流行に敏感で情報感度が高い人なのでは?
・ 若い銭湯ユーザーは、落ち着きや安らぎを好む、いわゆる「チル(chill out)」的な価値観を持っていて、銭湯に対して「チルい(=癒される、落ち着く)」要素を求めているのでは?
・ 若い銭湯ユーザーは、年齢の高いユーザーと比べて、銭湯を「おしゃれで映えるスポット」として捉えて、イベント的に利用しているのでは?
・ 若い銭湯ユーザーは「自宅の風呂ではできない体験」を求めているのでは?以上のような、若いユーザーの特徴=「新しい銭湯ユーザーの特徴」と考える。

 

 

調査方法
オンラインアンケート

 

 

調査対象者
調査対象 男女/20~49歳1都3県在住者の銭湯ユーザー
サンプル数301サンプル
年に数回では「利用している」とは言えないと考え「2ヶ月に1回以上」の継続利用者を「銭湯ユーザー」と定義しました。
また、年齢による傾向を比較するべく20〜34歳の人を「若年層」、35〜49歳の人を「中年層」として設定し、以下の回答を得ました。

ユーザーの若年層と中年層を比較することで、若年層ユーザーの意識や利用実態についての特徴をみていこうと思います。

 

 

若年ユーザーは、新しいものを気軽に取り入れる人
Q:あなたは、銭湯にどのようなイメージ・印象を持っていますか。(MA)

Q:あなたが普段、生活する中でのお考えについておうかがいします。
(そう思う~そう思わないの5pts)のTop2表示(「そう思う」〜「ややそう思う」の合計)
※一部抜粋(若年層ユーザーの上位50%の項目)

まず初めに、若年層の銭湯ユーザーと中年層の銭湯ユーザーの、消費、健康、生活意識の違いを見てみます。銭湯に限らず、生活全般に関する考えについて答えていただいた結果、若年層ユーザーは、中年層ユーザーに比べて、「人と違うことに興味を持ち、すぐに飛びつく」傾向がやや強いことが確認できました。また、若年層は、中年層と比べると「私生活を少人数で静かに過ごしたい」意識が強く、いわゆる「チル」的な価値観も確認できました。

 

 

若い銭湯ユーザーは「話題先行」
Q:あなたは、銭湯にどのようなイメージ・印象を持っていますか。(MA)

次に、銭湯に対するイメージや印象について答えていただいたところ、TOP3には、若年層では「癒される」、「知らない魅力がある」、「新しいことに取り組んでいる」が、中年層では「癒される」、「疲れが取れる」、「気軽に行ける」が選択されました。
若年層は中年層に比べて「新しいことに取り組んでいる」「若者が来ている」が高いものの、「気軽に行ける」、「落ち着く」、「ひとりでも行きやすい」は低く、決して気軽に行ってくつろげる場所ではないことがわかります。
「知らない魅力がある」と考える若い銭湯ユーザーには、銭湯そのものの機能面よりも、情報志向であり話題が先行している人が多そうです。

 

 

若年ユーザーは「銭湯に行くこと」に意味がある(中年層は効用を求める)
Q:あなたは普段、どのようなシーンで銭湯を利用しますか。(MA)

銭湯を利用するシーンについての質問では、若年層のTOP3は、「気分を変えたいとき」「長時間お風呂で過ごしたいとき」「体を休めたいとき」。
中年層は「気分を変えたいとき」の次は「広いお風呂に入りたいとき」「体を休めたいとき」の順に選択率が高い結果になりました。
差があるところを見ると、若年層では「長時間お風呂で過ごしたいとき」が高く、「広いお風呂に入りたいとき」、「体を休めたいとき」は低いという結果でした。
中年層は入浴して得られる効用を重視しているのに対し、若年層は「銭湯に行く」その行為に意味があるように見受けられます。

 

 

若者はシェアのために行く。また、シェアされたところを見に行く
Q:いくつかの銭湯を使い分けているとのことですが、その理由をお聞かせください。(MA)

複数の銭湯を使い分けている人に、複数の銭湯に行く理由を答えていただいたところ、TOP3は、「湯の効能が違うから」「設備が違うから」「日ごとの気分で変えているから」という結果に。
選択率に差があるところを見ると、若年層は中年層に比べ「メディアや口コミ等でオススメされた銭湯に行っているから」、「行った銭湯についてSNS等でシェアしたいから」が高いことが確認できました。若年層ユーザーは話題作りや情報の受発信を重視して銭湯を利用しているのではないかと考えられます。

 

 

結果・考察

 

 

若年層の銭湯ユーザーは、“銭湯ブーム”に乗っている
若年層ユーザーは、中年層と比較して、人と違う、センスの良いでありたいという意識が強く、好奇心が強い特徴が見られました。そんな若年層にとって、銭湯は流行のものとして捉えられており、その流行を自ら発信して盛り上げてゆきたいといった意識から、若年層の銭湯ファンが増えて行っているのではないかと考えられます。
しかし、銭湯の良さや価値に対しては曖昧で、なんとなく流行に飛びついているような部分が見えることから、銭湯が“一過性のブーム”にとどまっているのではないかとも考えられます。

 

 

ブームを一過性のものにしないためには、明確な“価値”や“目的”の創出が必要
今回の調査では、中年層ユーザーのほうが「銭湯のここが良い」といった具体的な価値や目的をもって銭湯を利用している実態が見えました。
現在、若年層にとってブームとなっている銭湯を一過性のものにしないためには、中年層ユーザーのように「銭湯のここが良い」と具体的に言えるような価値や目的を、若年層ユーザーにも持たせてゆくことが重要だと考えられます。

 

 

銭湯の事例から、古い業界が若いユーザーを取り込んでゆくために意識すべきこと
・ 若いユーザーは、商品やサービスの本質的な効用への期待よりも、イベントやレジャーとして快適に消費できることを求める。
・ 彼らの目的は「体験すること」「そこに行ってきたこと」、さらには「シェア」することであり、従来のユーザーの如く「本来の機能を味わう目」は肥えていないため、判断基準は曖昧になりがちである。
・ トライアル時の彼らをより深く取り込むためには、よくわからずに気軽にやってきた彼らを歓迎し、体験をエキサイティングなものにするだけでなく、その発信ニーズも満たす必要がある。

 

 

その他の結果など、詳細な調査レポートを無料で配布しております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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